こんにちは、「学ぶことは真似ることから」のブログです。
今回はシンガポールから真似できるところを学んでいきます。
まずは、OECD(Organisation for Economic Co-operartion and Development)経済協力開発機構が3年おきに調査するPISA(Programme for International Student Assessment)学習達成度調査をご覧ください。
シンガポールが上位を独占していことが確認できます。
シンガポールの前にこのPISAについて簡単に説明します。
PISAとは【国際学習達成度調査】
先ほどの表は、2015年に国際的に実施された、学習達成度の国・地域別のランキングです。
“PISA”は「国際生徒評価のためのプログラム」ですが、日本では「国際学習達成度調査」と呼ばれています。
パリに本部を置くOECDが考案し、その調査内容は世界中の教育専門家によって策定されおり、2015年調査では、世界72か国の約54万人を対象に調査しています。
調査の目的【知識の活用】
生徒が学校で学んだことを、実生活で活かせるかどうかを調べることです。
ただ単に知識を持っているかどうか、ということではなく、実生活の様々な場面で直面する課題に、知識をどのくらい活用できるかを評価する目的です。
調査の内容【3つの分野】
科学的リテラシーとは(PISAにおける定義)
- 科学的な考えを持ち、科学に関連する諸問題に関与する能力
- 科学やテクノロジーに関する議論に携われる
- 現象を科学的に説明できる
- 科学的な調査を説明・評価できる
- データと証拠を科学的に解釈できる
読解力とは(PISAにおける定義)
- 書かれたテキスト理解し、利用し、熟考し、利用できる
数学的リテラシーとは(PISAにおける定義)
- 数学的に定式化し、数学を活用し、解釈する個人の能力
- 数学的に推論できる
- 数学的な概念・手順・事実・ツールを使って説明・予測できる
調査の対象【世界中の子ども】
この調査で1位を独占したシンガポールは、義務教育で日本と異なる勉強の教え方をしています。特徴的な1つを紹介します。
シンガポールの学習法【バーモデル】
義務教育段階の特徴的な学び方の1つに「バーモデル」(Bar Model)と呼ばれる学び方があります。
「バーモデル」とは【文章が読み解きやすくなる】
文章を棒状の図に表し読解していく方法です。
突然ですが、次の問題をどのように解きますか?あるいは、子どもにどのように解き方を説明しますか?
(問題) ハムザさんはシンさんの5倍のお金を持っています。 ハムザさんからシンさんに120円渡すと 2人の持っているお金の金額は同じになります。 最初にハムザさんとシンさんは、 それぞれ、いくら持っていたでしょうか。
義務教育を終えた人であれば、中学校のときに習ったように、分からないことを文字X(エックス)にして、方程式を立てれば解くことができます。
ここでは、小学生の低学年の段階で出題されたと考えてください。シンガポールでは、こういった問題を小学生のうちに、容易に解くことが出来る授業を進めています。
バーモデルを使って解くと以下のようになります。
(バーモデルを使った解き方)
答えは、ハムザさんは300円、シンさんは60円です。
つまり、文章を図に表し、視覚化することで、論理的に考えることができるのです。
シンガポールと日本の違い
実は日本の小学生でも、図に表すということをやっています。
先ほどの問題は、いわゆる「倍数算」と呼ばれ、中学受験では定番の問題です。
”線分図”で表し解くことは、受験をする上では必須の考え方です。
しかし、小学校でこの線分図の解き方を、生徒に定着するまで、指導がされているでしょうか。そこまで徹底はされていません。
シンガポールでは、このバーモデルが徹底的に指導され、文章題を視覚化し論理的に考える力が養われているのです。
この指導が、PISAの結果に結びついている1つの要因です。
またシンガポールの教育制度も日本と違い、結果に影響していると言われています。
シンガポールの教育制度
日本と大きく違う点で、小学校卒業試験PSLE(Primary School Leaving Examination)が挙げられます。
PSLE( 小学校卒業試験 )とは
1980年に教育制度改革が行われ、小学校6年・中学校4年・高校2年の制度となりました。
ただし、進むコースよって代わり、コースの変更が可能とされています。
小学校6年生で行われる卒業試験で、エクスプレスコース・ノーマルコース(アカデミック)・ノーマルコース(技術)に分けられ、コースに応じて、ほぼその後進路が決まります。
- (7割程度)エクスプレスコース⇒”エリート”、大学進学へ
- (2割程度)ノーマルコース(アカデミック)⇒その後大学進学も
- (1割程度)ノーマルコース(技術)⇒将来技術職、高専などへ
このPSLEはシンガポールの国民的行事のようになっており、不合格者は留年か補習校で次年度受験します。
バイリンガル教育
もう1つの特徴は、バイリンガル教育です。
ほとんどのシンガポール人は、母語(中国語、マレー語、タミール語)のほかに英語を話すことが出来ます。
英語によるでの授業と母語による授業が行われ、英語は話せて当然となっています。
今後はさらなる改革も
しかし、この能力主義や受験競争で、子どもに過度のストレスが与えられているという見方もあります。
シンガポールは、このPSLEの廃止や抜本的な制度変更も考えられており、近く制度変更がされるとされています。
日本でも詰め込み教育の廃止でゆとり教育へ変わり、さらに最近は勉強量や質は大幅に増えています。
シンガポールの今後もどうなるのでしょうか。3年ごとに行われるPISAの2018年の調査結果もまもなく出るでしょう。
日本も結果に一喜一憂することなく、諸外国の良い点は真似をして取り入れ、学力向上につなげたいものですね(^^)